踊り場ディスコ、ダンスダンス

 

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つらくなったら非常階段に行くと以前言っていた。ぼくは今非常階段にいる。ここまでくると非常じゃなくて常だなと思う。常階段に座っている。

 

そして自分の人生をぼーっと振り返ってみると、ぼくは階段が好きだな、と思う。

階段が好き、ってどういうことだ。でも、なんだかぼくの23年という長いのか短いのかよくわからん人生の思い出の節々に階段が出てくる。

 

小学校の頃、久世君という友達とよく非常階段に並んで座って話をしていた。何を話していたんだろう。でも、周りのみんながドッジボールやかけっこに忙しい中間休みという20分、ぼくはずっと久世君と話していた。久世君は高校の卒業とともに、なんとか運輸で働きはじめたらしい。成人式の日に突然電話が来てびっくりしたなあ。未だにあだ名が小学校の頃と一緒だった。

中学の頃、当時ちょっと仲よかった女の子とよく話していたのも階段だった。坂道の多い住宅街に突然現れた階段だった。別に景色は良くないんだけど、階段に座っているだけで、背の高い家屋も植木鉢も、全く知らない街のものに見えたような気がしてぼくは好きだった。たぶん、思い出補正。

大学生になって友達が全然できなくて、それでお昼ご飯をどこで食べようってなったとき、さすがに便所飯は嫌だったから近くの公園の階段に座ってよく食べていた。桜の木がそこにあって、春夏秋冬と景色が変わりゆくのに頑張って風情を見出そうとして、夏の暑いのとか冬の寒いのとかを堪えた。

去年の夏、初めての海外旅行でパリに行ったとき、一番気に入った場所はモンマルトルの住宅街の中にあった階段。パリの市街を一望できる最高の階段だった。周りの家屋の異国感とか、青い空も曇り空も、ぼくには新鮮で、そしてずっと嗅いでいたい香りを醸していた。ぼくはそこには3度ほど行ったかな。旅行中。朝に、セバスチャン・ゴダールパン・オ・ショコラと、その辺りで売ってたコーヒーを買って、そこで食べるのが好きだった。また行きたいな、パリ。

 

階段に座っている時間ならそこらの人より多い気がする。そして立ち上がったぼくは、そこから上ったり下ったりしている。

好きな人と階段で座ってお喋りとかしたいな、とか考えたりしたけど、好きな人を階段なんかに座らせるわけにはいかないな、なんて思った。

じゃあ踊り場のベンチとかどうだろう。踊り場にベンチがあればいいな。そこに座ってもらおう。

でもぼくは階段に座る気がする。アホなんだろう。

ぼくの人生も立ち止まる時はたぶん絶対に階段の途中だと思う。そこから上っていくのか下りていくのかは知らない。まあ、上って行ってくれたらいいなと思う。

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