「クラウは食べることにした」について

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「クラウは食べることにした」(藤井論理)

 

スニーカー大賞の二次審査の発表でこのタイトルと名前が目に飛びついてきてから「これは絶対受賞するぞ」と思った記憶があります。タイトルとペンネームから漂うこのセンス、只者ではない、と。

授賞式の際に初めてお会いした藤井論理先生のインパクトもなかなかのものでした。只者ではない、またそう思った記憶があります。

 

さて、肝心の内容はどうでしょうか。

 

本作品は「ラブコメ」です。しかも空から女の子が降ってくる「ボーイミーツガール」形式の、王道のラブアンドコメディなんです。空から女の子が降ってくる、これは重要なんですよ。ぼくたちはいつだって天空の城ラピュタが大好きだ。

 

さて、ラブコメで重要なことはなにか。

ぼくは「ラブアンドコメディ」であることだと思います。そう。ラブストーリーだけでなく、コメディでなければならない。

「クラウは食べることにした」は、コメディとして非常に良い作品なんです。

ギャグも王道のものから「そこに目をつけるか!」と感心するものまで多岐にわたり、そのテンションについていけなくなるようなこともない、非常にバランスがとれているものばかり。

ただのギャグだと寒いこともあります。ライトノベルでありがちな。でもこの作品はストーリーやキャラクターそのものに魅力がたっぷり詰まっているので、しっかりと「笑い」に変わるんです。その辺りは藤井論理先生のバランス感覚が見事なんだなと思います。

 

あとクラウは本当に可愛いんです。言ってることは無茶苦茶なんですけど、なんか無性に可愛く見える。もう1人のヒロインもめちゃくちゃ可愛い。あとエロ展開のフェチのクセがすごい。藤井論理先生はやはり変態か。

 

最後まで読んで、すごくいいラブコメだったなぁ、と感心します。やはりラブストーリーですから、主人公の成長というところをしっかりおさえて、その辺りの筆の圧も見事でした。

ただ読み終わってふと気づくのは、あれ、なんか設定ぶっとんでんじゃない!? というもの。

そんな馬鹿な! と言いたくなる設定も気にならない、グッドデザインなラブコメです。ただどこかぶっとんでます。それがまた面白い。

 

というわけで死にビバが同じ特別賞を貰えたことが奇跡なんじゃないかと思える素晴らしい作品です。

 

同期作家が素晴らしいので、なんか良いときにデビューできたな、と心の底から思います。