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亀十が好きなあの子とぼく

亀十というどら焼き屋があります。

 

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 いや、どら焼き屋というには語弊がある。正確には和菓子屋であり、そこのどら焼きが目玉商品なわけであります。

1個315円。どら焼きにしては少々高い。しかし、土日となると行列は絶えることはなく、東京一有名などら焼きであると言っても過言ではありません。

 

この人気の正体は果たして。亀十の謎を追い、一同は浅草へと向かったのである。

 

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結論を言うと、美味しいのです。ただ、ぼくは亀十よりも好きなどら焼きがある、それだけ。

しかしここで問題がある。例えばあの子、ほら、あの子。教室の窓際で窓の外を、ぼけっ、と眺めていて、なにを見てるのかなと気になって近づいてみると、「あっ、 すぽん君、この前言ってた穂村弘の本、買ったよ」と言うようなあの子です。

あの子がもし「一番好きなどら焼きは亀十のどら焼き」と言えばどうなるだろう。

これは重要な問題です。人として、男としてどうなのか、を問われている。皮と皮とで挟まれた、あの粒あんに。

例えば「亀十美味しいやんな〜。でももっとぼくが好きなどら焼きがあんねんか」 と返すのはどうだろう。

これは自分の趣向と博識(どら焼きに関して)をアピールすることを旨とした返答です。

「すぽん君って、私よりどら焼きについていっぱい知ってるんだ……きゅん」

うん。いいんじゃないですか。やはり男は「パエリアってもともとは内陸で作られてたんだよ」と言えるぐらい博識であるべきですし、こだわりというものを持たなあかん。そう、男として。男としてどら焼きに妥協してはならん。

しかし、これでは「君とは合わない」とか「君はなにも知らないんだね」というニュアンスになりかねない。女性は共感を求める生き物であると、ネットのコラムで読んだことある気がします。そうだ、違う。共感なんだ。

「亀十美味しいやんな。この世で一番好きなどら焼き、亀十。亀十は美味い」

これでどうですか。亀十って三回言ってるし。

いや、でもこれを言ってあの子が喜んでくれたとしても、もしかしてたいへんな嘘をついてしまったのじゃなかろうか、とぼくはずっと胸の奥で悩み続けるのかもしれない。

ああ、あの時嘘をついてしまったんだ、と。

例えば結婚して、披露宴で「新郎新婦をつなぎとめたのは亀十のどら焼き」とか言われたらどうですか。ずきん。痛む。これは胸が痛む。ごめん、ほんとはぼく、うさぎやのどら焼きが好きなんだ。例えば彼女が浅草に寄るたびに「あなたが好きだと言ったから」と亀十のどら焼きを買ってきたらどうか。ああ、美味しいね、って、言いながらも「ひょっとして彼女はメンヘラなのでは?」と思ってしまうんじゃないかって。

 

たいへんだ。これはたいへんな問題だ!

 

そう言いつつ、ぼくは「うさぎや」にどら焼きを買いに行きます。なんでもいい。君が笑ってくれればそれでいい。そうだ。君にもこのどら焼きをわけてあげよう。口に合わなかったらそのときはそれだ。別に、どら焼きの好みが一緒の君が好きなわけじゃないし。つぶあんが好きならそれでいいんです。こしあんが好き? ちょっとそれはどうかと思いますけどね。